2018年11月24日土曜日

電子冷蔵庫の修理

随分前の9月初旬だったか、
近所でトラックから廃品を降ろしているようなので聞くと
壊れているからどうぞ、そこまで運びましょうか、と2つ返事で
この小型冷蔵庫をもらってきました^^;
外観も中もとても綺麗だったからです。
ヒートシンクを取るか、修理してサーバー入れるか、などと
色々画策したのあります。
ワインでも冷やしていたのかな~?
全く汚れもなく、新品の冷蔵庫の匂いしかしません。
後ろ側
ラベル「電子冷蔵庫」なのです。
実は、ペルチェ素子とヒートシンクが目当てだったのです。
品番「SR-R4802」を調べると、2018年9月20日に新製品がでたようです。
定価:18,288円
どうも旧モデルの口コミでは、1年位で冷えなくなるという症状が多いです。
これは、2014年製なので約4年で壊れたようです。
裏側のカバーを外します。
アルミのでかいヒートシンクかと思いきや、
幸か不幸か?本格的なヒートパイプのラジエーターが付いています。
83Wとあったので、ペルチェ素子は、12V 5~6Aってとこかな?
電源入れて見ますが、ペルチェ素子の両端は、0Vのままです。
電源基板が死んでいます。
ヒューズは、切れていません。
ということは、大物部品は死んでない可能性大です。
電解コンデンサは、頭の膨らみはなく、大丈夫そうです。
裏側も熱で変色した所や半田クラックは、見当たりません。
メインのスイッチング制御 IC「AZ494AP」
これは、カスタムICのようです。たぶんPICでしょう。
出力段の「HBR2045」
ツインのショットキーダイオード 45V 10A x2でした。
テスターで確認すると生きています。
出力のペルチェ素子の両端へ行く端子部
ハンダクズっぽい、これ大変怪しいですが...ゴミでした。
1次側のスイッチング素子「D13005MD」x2
これですが、死んでいないようです。
これが死ぬと普通はヒューズが飛ぶハズです。
後は、真中の黒いの「AS358P」Dual OP-AMPです。
これは、そう簡単には死なないでしょう。
この基板をじ~っと見ていると
494?!ん?微かな記憶があります。
どこかで見たような、聞いたような、気がしてきました。
記憶の奥隅を探していると...
まさが大昔に買ってたあれかも?
ゴソゴソとコレクションを探してみると、ありました!
1980年物のTL494です。
約40年前にスイッチング電源を作ろうかと買ったてたものです。
まずは、元のAZ494のDatasheetでピンNameを確認します。
続いて、期待を胸に、TL494のDatasheetのピンNameを見ると、
やった!同じだ~~っ!
こりゃいけるかも!
やっぱヒューズが飛んでないので、これが一番怪しいと思っていた所に
パーツを持っていたので、ワクワクしてきました。
基板のAZ494を、下のTL494に付け替えるわけです。
サンハヤト製の「はんだ シュッ太郎」30Wヒーターを出してきて
取り外しました。
交換完了です。
ペルチェ素子に外部電源で数V印加すると数百mAの電流が流れて
死んでないようなので、元の通りにコネクタを付けて
ACコンセントに挿して、庫内のスイッチを回してONすると
お~っ! 動き始めました!
TL494さん、実に38年の時を経て実用になったわけです。
それにしてもロングセラーのICです。
ラジエーターのファンも回り始めました。
扉を開けるとLEDランプも点きます。
左側のファンは、結構ホコリが付いています。
右側のファンは全然ホコリがついてないので、回ってなかったのでしょう。
手で回すと回り始めるのですが自力で起動できないのです。
9cm 12V 0.08A品です。
後で手持ちの8cmの12V 0.08Aに交換することにします。
ちょっと電源入れて放置してみます.....
温度設定を最低で30分程、試運転しましたが
中の温度計は、25°のまま室温と変わりません(´-﹏-`;)
ペルチェ素子の電流をクランプ型DC電流計で測ると
50mA程度しか流れていません。
ペルチェ素子が死んでいるのだろうか?
或いは、温度センサー系かな?

基板にURL「http://www.hanny.com.cn」が印刷してあります。
電源専門のメーカーですね~
ちゃんとしたメーカーのようです。
基板の「0757-83835908」を探してみると
「Wine Cooler Power Supply」とでてきます。ここに回路図がありました。
ほぼ同じもののようです。
494、358とか
回路図は、このPNG画像
接続図は、この図です。
よ~し、もうちょっと分解してペルチェ素子を取り出して見ることにします。
一旦、組み立てていたのですが
ファンを外して
 ラジエーターは、このボルトで留まっています。
ナットが外れないようにホットメルトで固めてあるので
ラジオペンチで取り除きます。
 ホットメルトはキレイに取れました。
ボックスレンチでボルトを緩めます。
ワッシャーがこだわって3枚も入っています。
この順番は、戻す時に間違えないように、アップ写真を撮っておきます。
更に下の方の3つのビスを外すとラジエーターが取れました。
スッキリ
中央上部の白いのが、4cm角のペルチェ素子です。
意外に小さいです。
ラジエーターがでかいからこれでいけるんでしょう。
ラジエーターの裏側。
ペルチェ素子との接触部分の熱伝導シリコングリスは、カラカラです。
 拡大
庫内には、
ファンがあります。
ビスの蓋とビスを外して
ファンを取り除くと、ヒートシンクが見えてきました。
コーナー2つのビスでとりつけてあるので外します。
ちょっと判りにくい写真ですが、右はヒートシンクを取り外して横にしています
黒いのはゴム状のパッキン、左の四角いのがペルチェ素子です。
ペルチェ素子を外すことができたので
庫内のヒートシンクは一旦、元に戻しておきます。
裏側に行って、下の四角いのがペルチェ素子です。
4cm角のペルチェ素子の冷える側(庫内側)には、
品番と日付が「TEC1-12708」「2014/05/06D」
調べると「TEC1-12708」は、標準的なタイプのようで
Datsheetは、このPDFかな。
127:Couple数、08:電流、を意味しているようです。
抵抗値は、1.5Ω
取り出したペルチェ素子を測ると2KΩ程、明らかに死んでいます。
12Vでは、6A辺りのようです。
4Vでも動作するんですね~
AliExpressで「TEC1-12708」を探すと沢山でてきました。
安そうな所でポチります。送料込みで\420

放熱用の熱伝導シリコングリスも買っておきます。
白よりグレーの方が安いようで、10g品、送料込みで\127

。。。。。ペルチェ素子は、2週間程で届きました。
3Dプリンターの上ですが、置いてるだけです。
ペルチェ素子の単体チェックをしておきます。
デジタルテスターでは、直流抵抗値:2Ω前後で変動します。
手で温めると100Ω辺りまですぐに上昇します。
手を離すと、また下がっていきます。
測定電流が小さいので熱電対温度センサーとしての動作になっているようです。
アナログテスターのx1の最低レンジでは、直流抵抗値:4.5Ω
こちらは、手で触っても変動しません。
直流電源4~5Vを印加すると、品番の刻印がある方が段々冷えていき
反対面が生暖かくなっていきます。
定格の12Vをヒートシンク無し印加することはできないので
1.5Vをかけてみると、電流:0.332A 流れました。
1.5 ÷ 0.332 = 4.5Ω なので上の測定と合います。
刻印されてる面の温度が下がり15℃
反対側は、温度が上がり24.8℃ です。
冷える側の15℃も、わりと安定しています。
室温は、約20℃なので、1.5V動作では、
ヒートシンク無しでもいい具合に放熱されているのでしょう。
ペルチェ素子単体の動作チェックは無事終了です。
熱伝導シリコングリスは、同時に注文してたのに。。。。。
届くのにしっかり4週間以上もかかりました(´-﹏-`;)
やっと冷蔵庫への取り付けにかかれます。
上が壊れたやつ、右下が新品。
元のと同じ様に根本にスミチューブを被せました。
グレーの熱伝導シリコングリスをしっかり塗ります。
ここに嵌め込むわけですが
壊れたペルチェ素子で何度か練習して
リード線の方から斜めに入れていくとすんなり入ることがわかり、
無事入りました!
ラジエーター側にもグリスをしっかり塗って
取り付けは、これらが使われていました。
上から、皿バネワッシャー、ベークライトワッシャー、スプリングワッシャーです。
分解した時の写真を見ながらワッシャーを順番に入れて
ナットで締め付け完了。
締め過ぎるとペルチェ素子が割れそうだし、加減が難しいです。
ボルトが元と同じ位出っ張る辺りに締めました。
この締め付けが悪いと、放熱が悪くなり、
ペルチェ素子が早く死ぬのではないかと思われます。
ラジエーターを冷却するファン2個中、1個は、回らなくて、
手で回してやると回り始めますが、一旦止まると自力で回らないのです。
付いているのは、9cm角 12V 0.08A品ですが、
手持ちの8cm角 12V 0.08A品に交換します。
動作確認開始です!
室温:20℃弱かな
庫内の温度設定ツマミを「MED」で始めます。
扉を締めるとペルチェ素子の両端電圧は、11.8V
電流は、クランプ型DC電流計で測ります。
40Aレンジなので精度は今一です。
約5分後、庫内は、2℃程下がったかな。
ファンの外枠:18.8℃
ラジエーターのペルチェ素子の真裏:26.6℃
17分後、庫内は、14℃
36分後、ラジエーターのペルチェ素子の真裏:27.0℃
37分後、庫内:9℃
内部の吹出口:8.4℃
(LCD表示がほとんど見えませんが)
ドアを開けた時は、ペルチェ素子両端電圧は、1.8Vまでさがり
庫内のファンも、ラジエーターのファンも止まるようになっています。
ドアを開ける度に、0.5~0.8Aで変わります。
電圧は、ほぼ一定の1.8Vで、その時の庫内温度で変わるようです。
この時点で、「LO」にすると、ドアを締めても
ペルチェ素子両端電圧は、1.8Vのままです。
「LO」では、庫内温度:10℃辺りになるようです。
一旦、電源を切って、夜まで放置して
21:44:50 「LO」で再開します。
上から、扉を締めた直後、16sec後、26sec後
とペルチェ素子両端電圧が、みるみる下がっていきます(DC 12Vレンジ)
電圧可変のアナログ制御です。
5.8V  2.23A  12.9W
21:45:30
40秒後、5.1V
1.99A  10.1W
21:46:02
1分12秒後、4.3V
1.66A  7.1W
21:46:42
1分52秒後、3.9V
1.48A  5.8W
21:47:34
2分44秒後、3.5V
1.31A  4.6W
21:48:30
3分40秒後、3.1V
ここで8cmのファンが止まりました。
元の9cmファンは、まだ回っています。
1.18A  3.66W
21:49:16
4分26秒後、2.8V
1.05A  2.94W
21:50:04
5分14秒後、2.5V
元から付いている9cmファンは、ここでようやく止まりました。
なかなかすごいファンです。
0.92A  2.3W
21:52:48
7分58秒後、1.8V
0.60A  1.08W
21:53:48
8分58秒後、1.8V
9分4秒後、0.59A   1.06W
扉を開けた時と同じ電圧で、これより下がりそうにないので電源を切ります。
そういえば、庫内温度は、測り忘れております(-_-;)
ここでクランプからリード線を外すと、0.02A
クランプ型電流計の40Aレンジなのでゼロリセットしても±0.05A程振らつきます。
ちゃんと動作することを確認できたので
圧着ペンチとスリーブを準備して
ペルチェ素子と基板からのリード線を元通りにスリーブで結線します。
庫内ヒートシンクと外側ラジエーターでペルチェ素子を挟んでいるナットも
元通りにホットボンドで固定しておきます。
ホットボンド終了。
冷蔵庫の裏側の全景。
タイラップでリード線を整えて
裏蓋を被せます。
もらってきて約3ヶ月ぶりに修理完了です。
500円足らずで修理できたので
かなり儲かった気分であります^^;
貰ってきた時は、まだ真夏でした、
今週始めは、少し暖かかったのに、昨日今日ととても寒いです。
野菜でも入れようかと思いましたが、陽の当たらない部屋で十分です。
さ~て、何入れようか?どこに置こうかな...(-_-;)