2017年4月29日土曜日

小型工作機CNC2418 その10(円盤ノコギリ)

新しいエンドミル(径3.175mmのやつ)が届いたので工具を登録していると、
あれっ!「スロットミル」ってのが目につきました。
円盤ノコギリみたいなやつです。
ずっと昔にどこかのホームセンターで買って小型リューターで愛用している円盤ノコギリです。
ひょっとしてCNC2418でもこれ使えるのだろうか?
試してみたくなりました。
直径22mm、厚み0.2mmです。
ステンレスではなく焼入れされているので木材やプラスチックもよく切れます。
普段は接着している筐体を分解する時に使います。
AliExpressで薄いもの探しましたが、ステンレス製ばかりで軟そうです。
Fusion360の新規工具に登録します。
材料はこれです。
以前、小径スピンドルのハカマにした塩ビソケットの残り半分です。
外径47mm、肉厚4.5mm、長さ54mm。
そうです、これで、”この前のALL手加工” を ”ALL CNC2418加工” にリベンジです。
Fusion360でスケッチします。
塩ビソケットと同じ径の円柱を作成。
高さ43mmの位置に幅0.5mm、深さ5mmの円周方向のスリットを入れます。
正方形のスケッチを描いています。
このスケッチ、試行錯誤の結果、後で気づくのですが、
CAM設定で加工原点を円柱の中心にすると工具がぶち当たるので
正方形のスケッチの角を加工原点にするためです。
CAMに行って。
[ストック]タブで「固定サイズ円筒」にし円柱全体の寸法と同じにします。
[セットアップ]タブで加工原点を先程の正方形スケッチの右下角に設定します。 
加工方法は[2D]-[円形]にします。
工具に登録していた円盤ノコギリのスロットミルを選択します。
なぜかすぐにツールパスが1本でてきます。
この加工だけツールパスをクリアしても消えないのです。
 [図形]タブで切削する面を選択しますが、非常に狭いスリットなので
 拡大してスリットの奥の面を選択します。
高さ設定では「ボトム高さ」:スリット下側、「トップ高さ」:スリット上側にして、
「退避高さ」、「移動高さ」はトップ高さと同じにします。
工具をZ軸方向に動かしたくないからです。
[パス]の所は、[複数パス]にチェックしても
[切削ピッチ回数]はスリットの深さに合わせ自動的に計算されません。
[切削ピッチ]を入力して、スリットの深さから回数を計算して入力する必要があります。
[切削ピッチ]0.3mm、[切削ピッチ回数]15回 として4.5mm切ることにします。
すると即座に1本だったツールパスが15本になります。
緑と黄色のツールパスは、進入・退出する場所ですが、
工具が加工原点からその場所へ移動する時に
材料をまたがずに移動させたかったので、右手前を加工原点にしたのです。
その為にこの位置にスケッチで四角を描いていたのです。
最後のタブは工具の進入・退出の設定です。
[水平進入/退出半径]の所は、2mm(上) ⇒ 4mm(下)にすると黄色のパスが右に伸びます。
高さ設定でZ軸が動かない様にしているはずですが、進入(赤矢印)と退出(緑矢印)の時にZ軸が0.5mm程上がるので、その時に工具が材料に接触しないように避ける為です。
[複数パス]にしている時は、1回のパス毎に進入・退出動作をします。
工具が接触する場合は、シミュレーション時に上の様に工具が赤になって教えてくれます。
[水平進入/退出半径]を大きくすると材料から遠ざかり下の様に接触しなくなります。
シミュレーションで接触警告がなくなるまで [水平進入/退出半径]を大きく設定します。
次にその上の[セーフ距離]です。
今回の加工の場合は、Z軸を上げたくないので[セーフ距離]:0mmにします。
これは元来、工具移動時にZ軸を上げて移動する高さなので「0」にすると
警告で文字が赤くなりますが無視しても大丈夫です。
斜め上からのツールパスの様子。
[OK]で設定を完了すると、警告が出てきます。
これは[セーフ距離]:0にしている為なので無視して[OK]します。
設定が終わると工具が出てきます。
初めてのケースなので
シミュレーションして妙な動きがないか念入りに見ます。
シミュレーション上から。
工具が1周回って進入・退出動作の時にこの様に材料から離れます。
ここで当たって工具が赤になっていると[水平進入/退出半径]を増やさねばなりません。
モデルを何回か書き直したり、加工原点を色々変えたりとやっとここまでたどり着きました。
シミュレーションがうまくいったので、本番です。
塩ビ管の中心を出す必要があるので紙にコンパスで47mmの円を書きます。
コンパスで中心に開いた穴を利用する為です。
これを塩ビ管に慎重に貼ります。
周りの紙を切り取ります。
その前に塩ビ管を固定する為の治具を作ります。
これを半分に切って両側から固定します。
捨て木を見つけてきてCNC2418にセットします。
ナフコで買ったステー、気に入っています。
厚みが3mmあるので頑丈です。
削れました。
30分もかからない予定が、Φ3mmエンドミル、深さ1mm、500mm/minでやっていたら
片穴の最後の方でエンドミルが緩み、危うく折れそうになったりとトラブル。
スピンドルのトルクとエンドミル強度は、深さ1mm 500mm/minに耐えるのですが、
エンドミルの固定方法が3mmのイモネジ2つねので緩むのです。
500mm/minでは、深さ0.5mmにしないとだめですね。
ER11コレットの必然性を感じます。
この様に塩ビ管を挟みます。
(撮影用に分かり易く紙を張っていない方を上にしている)
捨て木なので斜めに欠けています。
CNC2418にセットします。
まず0.6mmエンドミルで塩ビ管の中心(コンパスの針の穴)に合わせます。
ここで一旦、X・Y軸をリセット。
加工原点は、スケッチの四角の角です。
塩ビ管中心から右30mm、手前30mmでそこへ移動させます。
まずは、材料の上空で動きを最終確認。
大丈夫ですね。
ここで円盤ノコギリに交換して、カットする高さに合わせます。
この状態でX・Y・Zをリセットします。
XZモジュールがスレスレです。
では、行きま~す。切り始めです。いつも以上に緊張します。
 削り始めました。
動画で。
だいぶ進みました。
スピンドルは、塩ビが熱で溶ける恐れがあるのでS300(30%)、Feed:300mm/minです。
CNC2418でこれができると思わなかったので、なんか感激です。
終盤です。
円盤ノコギリがだいぶ食い込んでいます。
このスピンドルは低速でも結構パワーあるんですね。
これだけ食い込んでもよく回ってくれます。
思い切って低速で回したので、塩ビは溶けずに大丈夫でした。
終わりました。
約12分です。
上側を掴んで軽くひねると上に持ち上がりました。
パカっと取れました。紙一重で繋がっていた感じです。
円盤ノコギリと合わせてみます。
これで横切り完了。
ここまでできれば後はCNC2418で大丈夫でしょう。
次は、このソケットは、切った付近の仕切りの所の内径が小さいので
反対側と同等の内径にするため内側を削ります。
[2D]-[輪郭]を使います。
エンドミルは、3.175mm・先端フラット・2フルート・トウモロコシタイプ。
刃径が軸径と同じなのでギリギリまで掘れます。
 切り取った上部分をもう一度のせ、中心がズレていないか確認します。
実はこれが新しく届いたエンドミル。
3.175mm・先端フラット・2フルート・トウモロコシタイプ。
軸径と同じなのでギリギリまで深く掘れます。
塩ビは、削り屑の出方が半端ないです。
飛び散りますので掃除機から手を離せません。
動画で。
彫り込みは20mm(高さ43mm)にしていたので
ここで完了です。
300rpm、200mm/minです。
なんとか溶着せずに無事終わったようです。
11分40秒。
ちょっと中心がズレています。
位置合わせは難しいです。
次は、縦の切れ目です。
やはり、内径削るのと縦切りを同一図面でやるのは難しいです。
さっきと別の図面で切り欠きを描きます。
これも切り欠きの両側を切るだけなので
[2D]-[輪郭]です。
エンドミルは、1.5mm・先端フラット・2フルート・トウモロコシタイプ。
先程、内側削ったミルの径が小さいものです。
300rpm、100mm/minですが!
溶着発生!!
一旦、溶着を取って200rpm、100mm/minにしてみるも
だめでした。
水をかけながらかなあ、と考えていた所、これを思い出しました。
アクリル板のカット用にこれがいるかなと思って買っていたものです。
ずっとトウモロコシタイプを使っていたので存在を忘れていました。
PVC(ポリ塩化ビニル)用です。まさに専用のはずです。
上の写真のは、2LX3 212で径は2.0mmです。
Gcodeは、1.5mmミルのままですが、まあ、そのままでいいでしょう。
早速、このエンドミルに交換して最初から削り始めると
さすが専用!削れ方も音も前とは違います。
200rpm、100mm/minです。すばらしい削れかた。
エンドミルでこんなに違うとは驚きです。
動画で。
片側の溝が切れた途端にガタンと間が狭まったので
ちょっと危ないと思い、もう片方はこの状態で止めました。
まあ、最後まで行けた気もしますが、0.5mmも残っていないのでいいでしょう。
取り出します。
片方はカッターで切り離します。
 タイラップで縛り付け、お湯に5分程漬けると切り欠きが閉じました。
右が前回の手作業、 左が今回の。
切り欠き部の付き方が実に綺麗です。
この前のチャック付きスピンドルに取り付けました。
いい感じです。
CNC2418付属の775スピンドルと並べて。
肝心のドリルビットの出番はまだです。