2019年3月16日土曜日

小型工作機CNC2418 その71(TB6560 低速対策)

前々回のA4988/TB6560の電流波形比較の途中で、
どうしても低速時のA4988とTB6560の差が気になって仕方ありません。
すっかり嵌ってしまっております(-_-;)
右往左往の様子を漏れなく記録しているので長いです。
最後に、原因と対策をまとめています。

F100、F50、F10と落としていくと
A4988では、電流Peakも変化せず、リップルもでないのに
TB6560は、リップルが増えて平均電流が下がっているようなのです。
このリップルがどうしても気になります。
次の低速 F100とF50の2つを見ると
TB6560は、Peak 1Aに設定していて
リップルの上側は、約1A、下側が、Peak 1Aの約20%になっています。

F100
F50
TB6560の平均電流は、明らかに半分以下でしょう。
F10
オシロのサンプリング周波数のせいでリップルは見えなくなり、
TB6560の平均電流は、もはや20%程しかないことがわかります。
20%! ん? 静止時の電流設定 20%と同じ、偶然ではなさそう?
静止時の電流設定 20%と関係あるのだろうか?

まさか、step内で静止モードの電流になっているのではないだろうか?
そうだ、静止時モードを20%⇒50%にすれば、確認できるハズ!

静止モードの電流を20% ⇒ 50%にします。
F10、静止 50%、S2:OFF、25% Decay、1A
やっぱし、ヒゲを除く電流のPeakが、設定1Aの50%になりました!
2.2Ωで測定しているので、0.45A/DIVです。
静止電流50%、F10、25% Decay、Peak 1A、0.45A/DIV
2つ上の写真の左側の
F10、静止 20%、S2:OFF、50% Decay、1A
この時は、ヒゲを除く電流のPeakが、設定1Aの20%だったのです。
静止電流25%、F10、25% Decay、Peak 1A、0.45A/DIV
TB6560の机上検討した時
このTB6560ボードの回路図でTQ1、TQ2には、
74HC123:Mono Stable Multi Vibrator が繋がっていて、
CLKの立下がりで、74HC123の4pinがLOWになり
TQ1/TQ2が変化して静止時の電流モードになることがわかっています。
ここのTIの74HC123 Datasheetに
The calculation for the pulse width is
[ tw= 0.45・RX・CX at VCC=5V ]とワンショット幅の式があります。
ここで見つけた回路図では、R1:1MΩ、C1:0.1μFなので
 tw ≒ 0.45 x 1M x 0.1μ = 45msec
なので、1step 45msec以上になると、CLKがあっても
74HC123の4pinがHIGH期間が発生し、静止時の電流モードになります。
ステッピングモーター駆動は、1/16 Microstep、800step/mmにしてるので、
1回転(1波長)で16step x 4 = 64step
1step 45msecだと、
 1周期:45msec x 64step = 2880msec
  F値mm/min =(1 ÷ 周期)x 60sec ÷ 800step/mm x 64step/回転
   =(1/2880msec)x 60sec ÷ 800step/mm x 64step/回転
   =  F1.7
 或いは、1mmで800stepから
  F値mm/min = 1 ÷(45msec ÷ 60sec x 800step/mm)= F1.7
この速度までは、動作中に静止モードにならないハズなのですが、
もしや、R1:1MΩ、C1:0.1μF(左下)の値が、この回路図と違ってて
F1.7より速いFeedでも1setpの中で静止モードになっているのでは
と思ったわけです。 
早速、CLKと74HC123の4pinの波形を確認します。
F10
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
動作中なのに、74HC123の4pinが見事にHIGHになっています。
幸か不幸か、予想的中なのです(´-﹏-`;)
本来は、動作中(CLK有りでは)、ずっとLOWでなくてはならないのです。
(オシロのサンプリング周波数が低くなり細いCLKが見えなくなるので
 DS203の一番右のノブを何度か押して、一番下のWindowを赤にすると
 オーバーサンプリングで積み重ねモードで見えるようになります。
 早く思い出せばよかったのですが... )
F10
50μsecに拡大
74HC123の4pinは、CLK立ち下がりの後、約400μsec LOWで
その後、HIGHになっています。
HIGHでは、動作中なのに静止モードのTQ1、TQ2設定電流になるのです。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F10
5μsec/DIVに拡大
CLK 10μsecの立下がりで、74HC123の4pinがピタっとLOWになっています。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F10
F150でも、74HC123の4pinがHIGHになる期間が20%弱あります。
1step:500μsecと、CLK間隔が一致しています。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F150では、リップルが出始めるところなのです。
1stepの後ろの方で静止時電流設定の20%に下がっていて
それがリップルのように見えていたわけです。
F150、50% Decay、Peak 1A
F150、50% Decay、Peak 1A
F200では、
74HC123 4pinのHIGH期間がなくなり、ずっとLOWになります。
CLK間隔は、1step:375μsecになっています。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F200
そのF200では、リップルはありません。
やはりリップルの原因は、1stepの中で静止モードが発生してたからです。
50% Decay、Peak 1Aです。
F200、50% Decay、Peak 1A
F150にして、74HC123の4pinのLOW期間を測定すると
何と、0.412msec
45msecのハズが、1/100です。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F150
F10で、CLKの間隔を測ると、7.6msec
CLK = 1stepで、F10の1stepは、
10mm/min ÷ 60sec x 800mm/min = 7.5msec
で合っています。
最低FeedをF10にすると
74HC123の時定数は、この周期より長くしないといけないので
7.5 ÷ 0.412 = 18.2
今の時定数の18.2倍以上必要ということになります。
F10
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F10
TB6560ボードを調べます。
回路図では、R1、C1ですが、このボードは、R14、C10ですね~
R14:105なので合ってます。
C10を測ってみます。
久しぶりに使うと充電切れなのでUSBで充電して測定すると~
IC内部のダイオードが邪魔して容量は、測定できません。
で、秋月電子のDE-5000で
ボード3つとも測定します。
波形を見ていたボードは、538.7nF
残りの2個は、460.2nF、444.2nF とでました。
538.7nF なので、0.5387μF !
回路図より約5倍大きいのが付いているようです。
この式が合ってなかったのかな~?
Vcc=5Vなんだけど、RXが1MΩとでかいのでズレるのかな~?
 tw= 0.45・RX・CX at VCC=5V
もう一度、Datasheetを見ると、CX=0pFの時のだけかも?

Z軸は、HeightMap時のF10が、最低速度と考えると、
74HC123の4pinのパルス幅は、7.5msec以上にすればいいので、
今の0.5387μFで0.412msecから単純比例で計算して
 0.5387μF x(7.5 ÷ 0.412)= 9.8μF
時定数なのでタンタルにしたいですが
手持ちで、10μF以上では、最も近いので33μFしかありません。
まあ、取り敢えず、いいでしょう!
極性があるので間違えないように、セロテープで固定しておいて
ハンダ付け完了!
この前の0.5mmピッチに比べれば、全然楽です^^;
USB電源とLEDライトで照らして作業しています。
モドキハ*キルーペは、必須です。
所が~っ!
時定数が長すぎました(T_T)
74HC123の4pinのLOW期間が、21secにもなっています。
1sec/DIVがmaxなので測れません。
どうやら実装状態で測定した容量は正しくなかったようです(-_-;)
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
CLK OFF直後、C10: 33μF
そこで、74HC123の別のDatasheet、この東芝のP9の表を使わせてもらいます。
1MΩの線で見ると、0.412msecでは、300pF(赤線)だったようです。
10msecに設定するとすると、10000pF = 0.01μF(青線)
この表の右半分は、ほぼ tw=CRまんまですね~
単純計算すると
33μF ÷ 0.01μF = 3300倍 なので、10msec x 3300 = 33sec !
先程の21secはうなずけます。
というか、1Mと10μFだったら、すぐに時定数10sec付近だと
気づけなかったのが、とても悔しい~(T_T)
若い頃なら?...もはや...(-_-;)
電源電圧 4~6Vは、依存は少ないので、気にしなくてよさそうです。
フィルムコンは、0.012μFの手持ちを使うことにします。
では、F10 !
74HC123 4pinのLOW期間、5.27msecです(´-﹏-`;)
表の時定数の約半分ですね~
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F10、C10: 0.012μF
モーターを繋ぎます。
F10静止 20%、S2:OFF、100% Decay、1A
オシロは、オーバーサンプリングにしていませんが、
Peak 1Aがキレイに出てるようです。
F10、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
山の頂点らへんを拡大!
右端がちょうどピーク辺り、0.45A/DIVです。
波形の低い方は、静止モードの20%になっている部分です。
74HC123の4pinのLOW期間が、5.27msecと予定の約1/2ですが
1step 7.5msecに対して、70%を占めるようになったので、
平均電流は、高くなったハズです。
C10交換前は、0.412msecだったので
1step 7.5msecの95%近くが静止モードになっていたのです。
C10 = 7.5 ÷ 5.27 x 0.012 = 0.017μF ・・・ 0.018μFにすれば
C10 F10でも静止モードに突入することは、なくなりそうです。
F10、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
C10:0.012μFで5.27msecから逆算すると
オリジナルの0.412msecでは、C10≒940pFということになります。
回路図通りの0.1μFだったとすれば、
0.1 ÷ 0.012 x 5.27 = 44msec になるはず。
な~んだ、最初のTIのDatasheetの式が近いのか?
0.45 x CR = 0.45 x 940pF x 1MΩ = 0.423msecだ~(-_-;)
この式が、合っていたのでした。

異常がないか、Feedを速くしていきます。
F20、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
リップルなしです。
F20、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
F50、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
100%でもリップル出ません
F50、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
F100、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
リップルがなくなっています!
F100、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
C10交換前のF100は、こんなにリップルがあったのです。
F100、100% Decay、Peak 1A、静止時20%(S2:ON)
F100、C10: オリジナル、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
C10:0.012μF、F100でのCLK、74HC123の4pin波形
74HC123の4pinは、LOWのまま、HIGH期間が消えました。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F100、C10: 0.012μF
F100のC10交換前
74HC123の4pinには、50%程のHIGH期間がありました。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F100、C10: オリジナル
F200、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
C10を大きくした悪影響はないようです。
F200、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
F500、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
よきかな!
F500、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
F1000、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
電流波形は、問題ないのですが、
右端で停止して、GCode[G0 X0]で左端に戻した時に
止まる直前で脱調みたいな症状がでて止まりました。
減速が利かなかった感じです。
電源を入れ直しても動きません。
24Vと5V電源を数分OFFにして、やっと復活しました。
ちょっと不可解な嫌な症状です。
F1000、C10: 0.12μF、静止時電流20%、100% Decay、Peak 1A
F2000、100% Decay、静止時20%(S2:ON)
動き始めた途端、止まりました_| ̄|○
というか逆方向に動いて、左端にぶつかって止まったのです。
慌てて24Vコネクタを抜きました。

脱調みたいな滑りではなく、AB相の同期が完全にズレた感じです。
としても、74HC123の4pinのLOW期間を長くしただけなので
動作中から静止モードに移るのが遅れるだけなのです。
それなのに加速時、減速時に動作が狂っているようなのです。
なぜ、この様な不可解な現象が起こるのかわかりません。

C10を大きくし過ぎると、何らかの問題があるのかもですが、
少なくとも回路図のC10:0.1μFは、実績があるのではないかと思うわけです。

もう一度、波形写真を見直してみます。
今は、CLKをCNCコントロールボードのSTEPを論理反転しない接続です。
F150のCLKと74HC123の4pin波形では、
CLK幅があまりにも狭いので、立下がりで4pinが変化して
次のCLK立上りまでの期間が長いのです。
特に動作開始時と停止時は、この期間がとても長くなります。
ひょっとしてこれかな?
んで、CLKを反転してみることにします。
CLK-:STEP、CLK+:5Vを接続していましたが
CLK-:GND、CLK+:STEPに繋ぎ替えて
今までのCLKと反転にします。つまり、STEPとCLKは、論理反転になります。
F150のCLKと74HC123の4pin波形を確認します。
CLKの立下がりの直後に立上りがきます。
拡大!
CLK立下がりの10μsec後に立上がりが来ます。
F10の波形
C10:0.012μFなので
CLKの立下がりで74HC123の4pinがLOWになり、5.27msec続きます。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F10電流
CLKを反転する前と変わりないようです。
CLK反転、F10、100% Decay、静止時電流20%、Peak 1A、C10:0.012μF
F20
C10:0.012μFで、F20の1step:3.75msecなので
74HC123は、CLKの立下がりでRetriggerされ続け、ずっとLOWになります。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
F20電流
CLKを反転する前と変わりないようです。
CLK反転、F20、100% Decay、静止時電流20%、Peak 1A、C10:0.012μF
さて、問題は、Feed速い方だったので

F500電流
右端まで移動して、左端に戻しますが、異常なしです。
CLK反転、F500、100% Decay、静止時電流20%、Peak 1A、C10:0.012μF
F1000電流
右端まで移動して、左端に戻しますが、異常なしです。
CLK反転、F1000、100% Decay、静止時電流20%、Peak 1A、C10:0.012μF

F1500電流
3回ほど左右を往復して
右端から左端に戻しても異常なし!
CLK反転、F1500、100% Decay、静止時電流20%、Peak 1A、C10:0.012μF

F2000電流
10回ほど左右を往復したり、右端から左端に戻しても異常なし。
CLK反転で問題が発生したくなったと考えていいようです。
CLK反転、F2000、100% Decay、静止時電流20%、Peak 1A、C10:0.012μF
F2000の波形
CLKは、F4000辺りで、DUTY 50%になる感じです。
 黄色:74HC123 4pin 
 水色:CLK 
<まとめ>
低速異常の原因は、
原因1: C10が回路図よりかなり小さかった。
 回路図:0.1μF、実物:0.001μF弱
原因2: TB6560のCLKは、入力のSTEP信号を反転しないといけなかった。
 立上りと立下がりの間隔が、1stepの間隔に近かった。

対策1:
 74HC123の4pinのパルス幅を設定するコンデンサ:C10 に
 0.018~0.02μF追加
 (写真では、手持ちがなく、0.012μFです)
対策2:
 CNCコントロールボード(Woodpecker)との接続
 EN、STEP、DIRは、フォトカプラの後ろで全て論理反転する接続にする。

3.
 TB6560ボードのSwitch設定は、これに決定!
 XYZ軸、全部同じにできました!

XYZ軸(Peak 1.0A、Stop 20%、1/16 Microstep、100% Decayモード)
SW1~3:↓ ↑ ↓  S1~6: ↓ ↑ ↓ ↑   

今回は、ちょっと右往左往し過ぎましたが、
無事解決したと思います。
ちょっとハマりすぎたので部屋の片付けが止まっています(-_-;)

***その後、YY氏から情報が!***
何とYY氏のボードは、C10:0.1μFだったのです。
マーティーは、ハズレを引いてたという落ちになりました(-_-;)
OPEN DISPUTEしたいくらいです(~_~メ)
ちなみに、不良品と良品では、C10のシルクの向きが異なります。
左:不良品(マーティーのC10が違っているもの)
右:良品(C10を外して確認されてます)
更にその後、密林で購入されたというボード
C10のシルクがマーティーと同じで、外して測定した結果、
何と! 1269pF 成~!
やはり、C10シルクの向きが違うのは、何か意味があるようです。
**********

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